めったに腹を立てない温厚な夫が珍しくイライラしていた。リサイクルショップでの話だ。何でも営業先の時間つぶしのためにふらりと入ったリサイクルショップで、ずっと探し求めていた理想のガラスのショーケースに出会ってしまったそうだ。
一目ぼれした夫は即買いし、早速自宅まで送ってもらう手続きをしようとしたそうだが、そこのリサイクルショップと提携している配送会社ではガラス製品は送れないと断られてしまったそうだ。夫自ら他の配送会社に電話して交渉してみたものの、結局3社とも断られてしまったらしい。せっかく運命の商品に巡り合えたのに、運ぶことができないなんて確かにかわいそうだけど…それなら諦めればいいものを、「もうあんなに理想に近いケースには出会えない」との熱の入れようだ。結婚相手でさえ妥当なところで手を打てた夫が、である。
結局リサイクルショップには無理を言って、それを取り置いてもらうことになった。目下、そのガラスのショーケースをどうやって運ぼうか悩み中だ。特別なオプションをつければ配送してくれる会社もあるみたいだけど、金額がべらぼうに高い。現実的に考えると、友人からキャラバンを借りて自分で運ぶというのが一番いいのかもしれないと思っているようだ。
使っていない布団や毛布やプチプチで完全梱包し、なるべく安全運転で自宅まで持って帰れば、なんとかガラスを傷つけずに運搬できるかもしれない。ショーケースに新聞を敷き詰めたほうがいいかとか、いや、発泡スチロールでできた断衝材の方がいいんじゃないかとか一所懸命悩んでいる姿を見ると、妻である私だってそんなに大事にされたことがないのに…と複雑な思いに駆られるのだった。